青春を、謎を解くことに捧げられますか?
学校にある「開かずの扉」で事件が起こり、自分が犯人ではないかと疑われてしまう。
柴山祐希は、自分の、そして友達の疑いを晴らすため、これまでに得た推理能力を集結させて、謎に挑みます。
マツリカシリーズ全3作品を読んできて、本作「マツリカ・マトリョシカ」がいちばん面白かった!
前2作までが、「マツリカ・マトリョシカ」の大きな伏線だったようにも思える…!
マツリカシリーズは「マツリカ・マトリョシカ」のためにあった、と言っても過言ではありません。
「マツリカ・マトリョシカ」を中心に、マツリカシリーズを解説するよ!
マツリカシリーズとは、美女とヘタレ男子の学園ミステリー
マツリカシリーズとは、相沢沙呼さんの代表作で、「日常の謎」にフォーカスした学園青春ミステリー。
今回ご紹介する「マツリカ・マトリョシカ」は3作目にあたります。
学校近くの廃ビルに住む、妖艶な魅力を持つ女子高生(?)、マツリカ。
友達がおらず、クラスになじめない、冴えない男子高校生、柴山祐希。
祐希は、マツリカに「柴犬」と呼ばれ、パシリ扱いされつつも、学校で起こる謎を解明するために、徐々に他人と関わっていきます。
シリーズを重ねるごとに、祐希は成長していくし、マツリカさんとの関係性も変わっていくよ!
マツリカシリーズを読む順番【続編予定あり】
マツリカシリーズは、現在、第3作目まで刊行されています。
著者の相沢沙呼さんは、「続編も考えている」とカドブンインタビューで明言しています。
第4作目にも期待が高まるね!
マツリカさんには男子の夢が投影されている
マツリカさんって、いったい何者なんだろうね…?
マツリカさんは、本名もわからず、年齢や素性が不明で、ミステリアスな女性。
長い黒髪、短いスカート、豊満なボディ、妖艶な表情、ドSな言動…。
「おまえ、本当に役立たずね」
胸元のボタンを開けていたり、身体を密着させてきたり…祐希を誘惑しているかのような仕草は、わざとなのか、無頓着なのか。
個人的には、女性の身体を利用して、消費している気がしてしまう。
正直、「もうやめて」と言いたいような気持ちで、読んでいて心がザワザワします。
祐希の自制心に救われているだけで、なにか事件が起こってもおかしくないよ…。
マツリカさんは、小説の中の登場人物なので、男性の夢や理想が投影された存在なのだととらえて、物語を楽しむことにします。
「わたしを知ろうだなんて、百年早いわよ、おまえ」
「マツリカ・マジョルカ」相沢沙呼|あらすじと内容
第1作目「マツリカ・マジョルカ」は、連作短編集。
祐希がマツリカさんに命じられたのは、旧校舎裏を駆け抜けていく原始人を探せ、というもの。
学校に原始人なんているの…!?
祐希は、マツリカさんに携帯を見られ、毎日決まった時間に姉に電話をするシスコンだと弱みを握られます。
片目を失った女の子の幽霊がいるという怪談では、写真部の小西さんと知り合います。
小西さんって明るくて屈託がなくて、安心感あるよね。
文化祭で、小西さんたちと一緒に、盗まれた演劇の衣装を探すなど、少しずつ自分の居場所を見つけていきます。
祐希が抱えている傷は、まだ癒えそうにありませんが、マツリカさんとのこれからのストーリーを予想させるようなラストですよ。
「マツリカ・マハリタ」相沢沙呼|あらすじと内容
第2作目「マツリカ・マハリタ」のメインは、「一年生のりかこさん」の怪談話。
1年生のときに自殺したりかこさんは、学校に未練があり、3年に一度、1年生のネクタイが臙脂色になる年の、春先にだけ現れるという…。
ありがちな怪談だけど、本当にその「りかこさん」って実在したのかな?
「一年生のりかこさん」の謎を通じて、祐希の世界は広がります。
変な関西弁の高梨くん、留年して保健室登校の松本さん、単独行動が多い変わり者の村木さんなど、知り合いが増えていきます。
最初はマツリカさんに頼りきりで、情けなかったのに、自分で行動してるね!
いつもマツリカさんの推理に助けられてきた祐希ですが、最後には、逆に祐希がマツリカさんを救うシーンもあり、成長を感じられますよ。
「マツリカ・マトリョシカ」相沢沙呼|あらすじと内容
第3作目「マツリカ・マトリョシカ」は、シリーズ初の長編小説。
鍵となるのは、第一美術室をめぐる二重の謎。
2年前、密室となった第一美術室で、女の子が襲われましたが、証言があやふやで、結局は被害者の狂言だと片付けられました。
その後「開かずの扉」になっていた第一美術室で、再び事件が…!
そこには、制服を着せられたトルソー(頭や手足のない胴体だけのマネキン)が転がっていて、かたわらには古びたカッター、蝶の標本が散らばっていました。
なんだか2年前の事件をほのめかしているような…?
それは、女子テニス部のロッカーから盗まれた、美人で人気者の七里観月の制服。
祐希は、マツリカさんの指示で、女子テニス部の部室の天井にあるという、女の顔の形をした染みの調査をしていました。
美術部の春日さんの手引きで、深夜に女子テニス部の部室に侵入したとき、うっかり携帯のストラップを落としてしまったのです…。
そのせいで、祐希は制服泥棒とストーカーの容疑をかけられてしまうよ。
祐希だけでなく、過去に七里とトラブルがあった松本さん、同じストラップを持っていた美術部の野村先輩も容疑者候補に。
祐希は、自分のみならず、友人たちの疑いを晴らすために、真相を追求します。
「マツリカ・マトリョシカ」相沢沙呼|マツリカさんからの自立
1作目では徹底的に情けなくて、2作目でもマツリカさんに振り回されてばかりいた祐希。
ですが、3作目の「マツリカ・マトリョシカ」では、マツリカさんに反抗したり、自分の力で真犯人を見つけようと努力しています。
高梨くんや松本さん、春日さんたちと協力しあう姿は、もうマツリカさんと出会ったときの「哀れな柴犬」ではありません。
マツリカさんに勉強を教わったおかげで、留年している松本さんや、1年生の春日さんには、逆に勉強を教えてあげられる立場にまでなりました。
頼ってもらえるのって、うれしいことだし、期待に応えたいって思うよね。
祐希は、自分なんて何もできない、役に立たない…と、存在価値を見いだせずにいましたが、本当はそんなことないんです。
現に、祐希の推理に応えて、友達たちが支えてくれました。
前作までより、マツリカさんの出番が少なめなのは、祐希が自立しつつある証。
もう大切な人の声を聞き逃さないために、祐希が過去を克服して成長していくのを見届けたいですね。
マツリカシリーズは、ひとりぼっちの人に寄り添うミステリー小説
マツリカシリーズは、柴山祐希のように、学校や社会にうまくなじめないでいる人たちに、寄り添うようなミステリー。
大切な人に頼ってもらえなかった経験を経て、自分の狭い世界に閉じこもってしまった彼が、「僕なんて役に立たない」の殻を破っていく…。
健全な男子なんだから、マツリカさんの美しさにムラムラしちゃうのは仕方ないよね。
自分から人に関わることで、少しずつ成長していく祐希を見ていると、「人は変われるんだ」と実感します。
続編もあるようなので、今後も目が離せません。
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