おすすめの作家さんを聞かれたら、まっさきに彩瀬まるさんの名前を挙げます。
だけど、残念ながら、今まで「知ってる!」と言われたことがありません。
すごく繊細で優しくて、いいお話を書かれるのに、なぜか知名度があんまりないんだよね。
艶めかしくもあり、生々しくもあり…人の心の内側をそっとかき回すような作風です。
静かで、あたたかくて、温度を感じるような…ひとつひとつの感情をすくい上げて、大切に扱ってくれます。
泣かせよう、なんて意図はまったくなさそうなのに、気がついたらのめり込んで、涙しているんです。
この記事では、直木賞候補にもなった作家・彩瀬まるさんのおすすめ作品をご紹介します。
これからも、新しい作品が発売されたら、随時更新していくよ!
彩瀬まるのプロフィール・特徴
彩瀬まるさんは、1986年、千葉県生まれ。
私と同世代の作家さんだからか、特に描写が響くんだよね。
ご家族の関係で、5歳のときにアフリカのスーダンで2年間、その後アメリカのサンフランシスコで9歳まで暮らします。
小学校4年生のとき帰国。海外生活でも、帰国後も、常に本がそばにありました。
中学2年生から、自分でファンタジー小説を書き始めました。上智大学在学中に、作家になることを決意します。
2010年、「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」の読者賞を受賞し、デビュー。
2017年、「くちなし」で直木賞候補になり、ようやく知名度が実力に近づいてきた感があります。
でも、まだまだ有名になってほしい作家さんだよ!
彩瀬まるさんの作品には、白と黒がある
彩瀬まるさんの作品は、優しくあたたかい「白」と、エグくてグロい「黒」があります。
どちらかというと、初期の作品は「白」が多くて、最近の著作は「黒」が目立っています。
この記事で紹介する小説には、私の独断と偏見で「白」か「黒」かを記載しています。(アンソロジーを除く)
言っておくけど、シーアの勝手な分類だからね。
あくまでも個人的見解だよ!
私は「白」のほうが好きですが、「黒」のエグみが癖になるという人もいるので、好みに合わせて選んでくださいね。
作品によりますが、大丈夫です。たくさん人が死ぬような残虐さとは少し違います。
彩瀬まるの小説・ノンフィクション|おすすめ15選
彩瀬まるさんの小説は、いろいろな形態があるので、幅広い世代や好みの方に受け入れられるはず。
短編・長編・アンソロジー・ドキュメンタリーの4つに分けてご紹介します。
ひとつひとつ紹介していくよ!
彩瀬まるのおすすめ短編集|7作品
彩瀬まるさんは、特に短編が秀逸です。
中でも、ひとつひとつのお話が関連し合う、連作短編集の素晴らしさが際立っています。
まず最初に読むなら、「骨を彩る」がおすすめ!
「骨を彩る」彩瀬まる
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あなたは、大切なものを失ったことがありますか?
埋められない穴を感じながら日常を過ごしている方に、読んでほしい作品です。
そこはかとない孤独だったり、大切な骨が欠落しているかのような心許なさ、取り戻せない過去、もういない、かけがえのない人…。
時間が経っても、何かが解決するということはほとんどなくて、傷はいつまでも消えず、じわじわ抜けない棘のように残ります。
だけど、人は生きていかなくてはなりません。
痛いところに触れられると、最初は「触らないで」と思うのだけど、その手が温かくて、なでてもらっている間に痛みがやわらいでいく…。
そんな心地よさを感じる連作短編集です。
- 白
- 最初の1冊におすすめ!
「神様のケーキを頬ばるまで」彩瀬まる
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一生懸命なのに、どうしてもうまくいかない…そんな人たちにスポットライトを当てた短編集。
どのお話にも共通しているのは、「深海魚」というタイトルの映画と、ひとつの雑居ビルのテナント店であること。
登場人物たちは、同じビルに入っているマッサージ屋、カフェ、IT関連企業に勤務しているよ。
生きていると、いろいろなことがあります。頑張っているのに、空回りしたり立ち止まったり。
誰に何を思われても構わない、と言い訳せずにいられる強さがほしいけれど、どうしても周りの目を気にしてしまう。
輝かしい才能を持った人に憧れ、近づきたくて、でも、自分はあちら側へは行けない…と、渇望する気持ち。
痛い、切ない、突き刺さるフレーズがたくさんあって、そのたびに前へ進むエールをもらえるような作品です。
- 白
- お仕事系小説
「桜の下で待っている」彩瀬まる
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桜前線が日本列島を北上するように、さまざまな理由で新幹線で北へ向かう人たち。
事情はそれぞれですが、胸には「ふるさと」「家族」への思いがあふれています。
家族って、ときに面倒で鬱陶しいけれど、切っても切れない愛おしいもの。
仲違いをしても、疎遠になっても、命が途絶えてしまっても、自分のルーツであることは変わりません。
優しい思い出もあれば、苦くて忘れたい記憶もあるけれど、春という季節が前向きな気持ちにさせてくれます。
新しいスタートを応援してくれるような作品だよ。
私は、年をとっても、モッコウバラのワンピースのような、金色の羽衣をまとっていたいな。
- 白
- 春に読みたい本
「くちなし」彩瀬まる【直木賞候補作】
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美しさと、えぐさと、儚さと、生々しさと。
見ないふりをしたいようなことを、目の前につきつけられるような世界観。
目を背けたいのに、視線が離れてくれない、ちょっとグロテスクで艶めかしいお話。
たとえば、不倫相手と別れる代わりに、片腕をもらう話とか…!
誰かを愛おしいと思う気持ちと、傷つけたい、憎い、奪いたいと思う気持ちは紙一重。
愛すれば愛するほど、憎らしくなるし、奪いたくなるし、自分が自分じゃなくなってしまう。
そんな、狂おしいほどの愛を、胸焼けするくらい受け取るような短編集です。
直木賞候補になりましたが、直木賞らしくない、ある意味問題作といえます。
- 黒
- 直木賞候補作
- 既存の価値観を揺るがす問題作
「眠れない夜は体を脱いで」彩瀬まる
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「手が大好きなので、いま起きている人の手の画像をください!」
ネット上の掲示板のひとつの書き込みで、ゆるくつながる人たちを描いた連作短編集。
登場人物たちは、それぞれ違和感にも似たコンプレックスを抱えています。
ネットの掲示板に触れても、彼らの人生を左右するほどの大きな影響はないけれど…置かれている状況によって捉え方が変わったり、現実と向き合うきっかけになるのです。
自分で自分のことが受け入れられなくて、窮屈さを感じながら生きている…そんな人におすすめの作品。
- 白
- ゆるく関連する短編集
「まだ温かい鍋を抱いておやすみ」彩瀬まる
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食べることで救われたり立ち直ったり、逆につらい体験と結びついていたり、食べ物にまつわる記憶を元にした「食べものがたり」。
日常に溺れそうになりながら、なんとか泳いでいる…そんなギリギリのところを、食べ物に救われる。
ヒリヒリとした緊張感を、やわらかくほぐしてくれるような作品。
むやみに主張するわけでもなくて、主人公たちの暮らしをサポートしてる感じだよ。
登場人物たちは、それぞれ無理をしながらも、社会に適応しようともがいています。
今はキツくて苦しくて、それどころじゃないかもしれないけれど、おいしい食べ物はきっとこれからの力になる。
食べることは、体にも心にも欠かせない栄養だと再認識することでしょう。
- 白
- 生きる気力が湧いてくる作品
「さいはての家」彩瀬まる
駆け落ち、逃亡、雲隠れ。人生に行き詰まった人たちが流れ着く、ひとときの住まいをめぐる連作短編集。
ひとつの家を舞台にした物語で、登場人物たちは、それぞれの事情を抱えてここに移り住みます。
田舎の古い家なのに、なぜか借り手が途切れなくて、いろんなものから逃げてきた人たちが引き寄せられるのです。
すべてを捨てて逃げ出したくなること、きっとあるよね…。
逃げて生き延びた自分を褒めてあげなよ、という言葉に、全てが許されたような気持ちになります。
暗い過去を持つ人たちのお話ですが、希望を感じさせるラストですよ。
- 黒
- 最後に救いあり
彩瀬まるのおすすめ長編小説|3作品
彩瀬まるさんは長編もおすすめ。
じっくりと深まっていくストーリーを味わってくださいね。
「あのひとは蜘蛛を潰せない」彩瀬まる
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チェーンのドラッグストアで店長として働く梨枝は、8歳年下の学生アルバイト・三葉くんと付き合い始めます。
支配的な母の影響で、ちゃんとしてないこと、みっともないことが不安になる梨枝。
母がジャッジする正しさに縛られて、自分が変なんじゃないだろうか…と自信が持てないんです。
なんでも与えてくれるけど、自由にはさせてくれない母親。
だけど、母親の寂しさを思うとかわいそうな気がして、反抗することができない。
見ているとモヤモヤするんだけど、これまで梨枝が置かれてきた環境を思うと、仕方がないのかもしれない…。
梨枝の三葉くんへの愛情は、危うく母に近づいてしまっていたように思う…他の愛し方を知らないから。
蜘蛛を潰せる人と、潰せない人の、違いはなんだろう?
不安と戸惑いを内包しながら、受け入れて、生きていくしかないのかもしれません。
- 黒
- 母娘関係に悩む方におすすめ
「やがて海へと届く」彩瀬まる
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真奈は、心からの親友だったすみれを、震災で失いました。
でも、亡くなったのかどうかはわかりません。
遺体は見つかっていなくて、行方がわからないまま、震災から3年が経ったから…。
気持ちに区切りをつけられず、忘れることを自らに禁じ、いつまでも前に進めないでいます。
だんだん、忘れたくないっていう気持ちが、忘れちゃいけない、に変わってきてるのがつらいね。
すみれの恋人だった遠野くんが、確証がないのに、すみれを死者として扱うことに抵抗を感じる真奈。
でも、忘れないでいることは、果たしてすみれの願いなのでしょうか。
自分だったらどうしてほしいだろう…?
死を見つめるのではなく、残された生きる人のための選択肢であっていい。
きっと、震災で思いもよらない最期を迎えた人たちの周囲では、真奈のような葛藤を抱えた人はたくさんいるのでしょう。
- 白
- 生と死を考える本
- 震災関連
「不在」彩瀬まる
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明日香は人気マンガ家で、5歳年下の売れない俳優の冬馬と同棲しています。
マンガ作品が舞台化したとき、役者として出会って、付き合いはじめたんだよね。
ふたりの関係はうまくいっていましたが、明日香が亡くなった父から実家の洋館を相続してから、ギクシャクしてしまいます。
父とは長い間疎遠で、母は無関心で、家族に機能不全感を抱いてきました。
もっと愛されたかった、一緒に仲良く暮らしたかった…と愛に飢えている明日香が、なんだか怖いけれどかわいそうな、不思議な感情に陥ります。
きっと明日香は、アダルトチルドレンなんじゃないかな。
これまで知らなかった、父の生きた痕跡を見て、明日香は心を乱されます。
出口のない狭い世界で、人と上手に関係を結べない明日香が、どうなっていくのか…。
- 黒
- 家族関係で悩む方におすすめ
彩瀬まるのアンソロジー参加作品|4作品
アンソロジーとは、複数の作家さんが、ひとつのテーマで書いた作品を集めて、1冊の本にまとめたもの。
1冊でいろんな作家さんの小説が読めるから、なんだかオトクな気分!
彩瀬まるさんは、短編が得意なので、アンソロジーにもよく参加されています。
短い中にも、彩瀬まるさんらしいエッセンスが凝縮されていて、そうそうたる執筆陣の中でもキラリと輝く作品ばかりです。
アンソロジー「あのころの、」
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女子高生の主人公を中心に、瑞々しい「あのころ」を切り取ったアンソロジー。
思春期の頃って、くだらない話はたくさんするけど、本当に大切なことは誰にも言えない。
閉鎖的な学校という箱庭における、学力と外見とお家柄が総合されたスクールカースト。
彩瀬まるさんは、「傘下の花」で、何者かになろうとする女子高生を描いています。
アンソロジー「明日町こんぺいとう商店街」
招きうさぎがマスコットの「明日町こんぺいとう商店街」で繰り広げられるアンソロジー。
ひとつのお店ごとに、ひとりの作家さん、ひとつの短編。
ほっこりあったかい、読んでるだけでおいしいストーリー。
彩瀬まるさんは、「伊藤米店」で参加。
普通の主婦が、イケメンに成長して帰ってきた同級生にほんのり憧れを募らせます。
変わらないから良いものと、変わらなさすぎて生まれる倦怠感がうまく表現されていました。
「明日町こんぺいとう商店街」はシリーズ化されていて、関連作品も多く出ているよ!
アンソロジー「運命の人はどこですか?」
「運命の人」をテーマにしたアンソロジー。
運命の人と言っても、ベタ甘のラブストーリーばかりじゃないんです!
どちらかというと、恋愛下手で、ちょっとほろ苦い、遠回りした人たちばかり。
彩瀬まるさんは、「かなしい食べ物」という、馴染めない家族から逃避して、いとこが作ってくれたパンに執着する女の子のお話を書かれています。
繊細で静かな描写で、彩瀬まるさんの良さが発揮されていますよ。
アンソロジー「文芸あねもね」
彩瀬まるさんのデビューのきっかけとなった、「女による女のためのR18文学賞」に縁のある作家さんたちによる、東日本大震災の復興チャリティ同人誌。
もともとは電子書籍として発売され、その後書籍化。
通常の本には、編集など多くの人が関わるけど、「文芸あねもね」は作家さん自らが発案し、相談を重ねてきました。
出版までの過程を示した掲示板を、誌面上でチラッと見られるのも楽しい!
残念ながら、今では廃刊…。電子書籍だったんだから、Kindleとかで復活しないかなぁ。
彩瀬まるさんは「二十三センチの祝福」で参加されています。
彩瀬まるのドキュメンタリー|1作品
実は、彩瀬まるさんは小説の単行本のデビュー前に、ドキュメンタリーを出版されています。
その後の彩瀬まるさんの方向性を決定づけるできごとがあったから。
唯一のドキュメンタリー作品だけど、これをなくして彩瀬まるを語れないよ。
「暗い夜、星を数えて―3・11被災鉄道からの脱出」彩瀬まる
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彩瀬まるさんの唯一のドキュメンタリー作品は、東北大震災での被災体験を生々しく語ったノンフィクション。
東北へ向かう電車の中で、大震災に遭い、すんでのところで津波から逃れ、人たちの親切や温かさに触れて過ごした5日間。
原発事故を知らせる警報。
目に見えないからこそ恐ろしい放射性物質。
ほんの少しの差で、生と死の明暗を分ける、底知れない怖さ。
当事者だからこそ書ける、リアルな体験記で、ゾクゾクしたよ…。
離れたところに暮らしていると、どこか他人事で遠い感覚になってしまいます。
ですが、当事者たちにとっては、恐怖が染み込んでいるのがリアルな日常なのです。
時間が経っても、きっと癒えることのない傷もあるはず。
この被災体験が、彩瀬まるさんの著作「やがて海へと届く」「桜の下で待っている」などに影響を与えたことは間違いありません。
2020年も、彩瀬まるさんの作品に注目!
彩瀬まるさんは、近年も積極的に執筆活動をされていて、2020年も新刊の発売予定があります。
「まだ温かい鍋を抱いておやすみ」を発表され、評判もよく乗りに乗っています。
歳を重ねるごとに深みが増していく、彩瀬まるさんの新境地が楽しみです。
彩瀬まるのおすすめ作品15選|まとめ
彩瀬まるさんの作品は、いろいろな楽しみ方ができるので、どんな方にも自分にぴったりの小説がきっと見つかります。
きっと、1冊読んだら、他の作品も読んでみたくなる魅力がありますよ。
本を読みたいけれど、かさばるから持ち運びにくい、置く場所がない…とお悩みの方には「Kindle」がおすすめ。
いつでもどこでも、片手で読めるから便利。
私は、防水のiPhoneをお風呂に持ち込んで、Kindleで読書しています。
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