家族のあり方が多様化している現代。
離婚や死別、シングルやステップファミリーなど、さまざまなあり方が認められるようになってきました。
家族愛って、いったいなんなんだろう?
身近すぎて、ときに甘えすぎてしまったり、壊れそうになったり…。
家族って、意外と儚いものなのかもしれません。
また、血のつながりがなくたって、家族といえる関係性もあります。
この記事では、さまざまなあり方の家族を描く本や、家族のあり方を考える小説をご紹介します。
あなたの琴線に触れる本を見つけてくださいね。
この記事は、おすすめの本が見つかったら随時更新していくよ。
家族のあり方を考えさせられる小説12選
一昔前は、お父さんとお母さんと男女の子どもたち、というカタチが理想の家族像でした。
家族の姿は、ひとつひとつ違っていて、幸せな家庭もあれば、今にも壊れそうな家族もあります。
家族の素晴らしさ、怖さ、距離が近いからこその複雑な感情を描いた小説をご紹介します。
家族について深く考えてこなかった私でも、感銘を受けた作品がたくさん。
どれも、ひとつの決まったカタチではないのがおもしろいのです。
ひとつひとつ紹介していくよ!
「そして、バトンは渡された」瀬尾まいこ【本屋大賞受賞】
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17歳の優子には、父親が3人、母親が2人もいます。
苗字は3回変わり、家族の形も7回変わりました。
えっ!? めっちゃ複雑じゃない…?
それでも、優子はちっとも不幸でもかわいそうでもないし、健気だとか頑張っているというのとも違って…フラットな感性で、とにかく応援したくなるんです。
親がたくさんいることを、ありのままに受け止め、メリットには大いに感謝し、デメリットはサラッと受け流す…優子の処世術には、大人でも感心するほど。
2019年本屋大賞受賞作で、家族の新しい価値観を見せてくれる作品です。

「東京バンドワゴン」小路幸也【シリーズ14作あり】
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東京の下町にある、代々続く古書店「東京バンドワゴン」。
オーナーの堀田家には、60歳のロックンローラー
我南人はほんとに有名で、ときどきファンが訪ねてきたり、騒動のきっかけになるんだよね。
店主・勘一の亡くなった妻・サチの語りでストーリーが進むのが斬新。
藍子、紺、青の3人は兄弟ですが、藍子はシングルマザーだし、青は我南人の愛人(女優)の子で、かなり複雑なはずなのにとても仲良し。
古本屋の隣にはカフェがあって、紺の妻である亜美が中心で運営しています。
ご近所さんが気軽に上がり込み、まるで朝のNHKテレビ小説のような空気感。
小さな事件が起こって解決したり、家族にまつわるいざこざがあったり、とにかく騒がしくて話題が絶えないおうち。
まるでサザエさんみたい!
続編もあるので、シリーズで読むのがおすすめ。
子どもたちが成長していたりして、追いかけ甲斐のある作品ですよ。
「博士の愛した数式」小川洋子【第1回本屋大賞】
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ぼくの記憶は80分しかもたない。
数学を研究している博士のもとに派遣された家政婦の「私」。
博士は、事故のせいで短時間しか記憶が持続できず、関係性を構築するのが困難でした。
毎回、会うたびに、初対面みたいになっちゃうもんね…。
「私」の10歳の息子「ルート」が関わり始めたことから、少しずつ数字だけでない交流が生まれます。
靴のサイズや、誕生日など、身の回りの数字に、素数や完全数を見つけて、共通の話題にする彼ら。
お互いを理解しあい、尊重し、愛を注ぐ…血のつながりはないけれど、博士とルートの関係は、まるでおじいちゃんと孫のよう。
それでも、覚えていないなら、意味がないでしょうか?
儚いかもしれないけれど、博士たちの関係を見ていたら、意味ないなんて言えないと思うよ。
記念すべき第1回本屋大賞(2004年)を受賞した作品でもあります。
「架空の犬と嘘をつく猫」寺地はるな
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4歳だった次男の青磁を不慮の事故で亡くしてから、羽猫家は歯車が噛み合いません。
母は現実を受け入れられず、父は愛人のもとに逃げて、姉は反発して家を出ていきました。
みんな心が弱くて、そうしないと壊れてしまいそうだったんだよね…。
主人公の山吹は、小さい頃から、周りの大人が望む「嘘」に合わせて生きてきました。
ボロボロに傷ついて、どうしようもないとき、心の中に飼っている架空の犬をなでて、自分を落ち着かせています。
現実の犬を飼えるような家ではなかったからね。
祖母には「あんたは社会にとって、なんの役にも立ってない子」と言われますが、その真意は言葉通りではありません。
世の中って、プレゼントにかけるリボンのように、一見無駄なものがあってこそ、彩りが生まれるもの。
回り道をしたけれど、30年かけて、羽猫家はあるべき形になりました。
心を許せるパートナーと出会った山吹の、幸せを願わずにはいられません。
一般的には泣ける小説じゃないと思うんだけど、私は泣けて泣けてしょうがなかったよ。

「キネマの神様」原田マハ
ギャンブルと借金にまみれ、心臓病を患い、映画好き…とんでもないのに憎めない父・ゴウちゃん。
シネコン開発を手がける大企業を辞めてしまった娘、歩。
父と娘をつないでいたのは、映画でした。
ふたりは仲良しってわけじゃなく、すこし距離がある感じだけど、そうやって結びつくものがあるのはいいよね。
父が、映画雑誌「映友」に、勝手に歩の評論を投稿したことから、歩はライターとして編集部に採用されました。
父は映画ブログをはじめて、有名な評論家と映画評をやりとりしたり、ネット上で友情が芽生えたり…人生が大きく変わっていきます。
みんなが幸せになる、キネマの神様。
古い映画に詳しくなくても楽しめる作品だよ。
「八日目の蝉」角田光代【ドラマ・映画化】
希和子は、愛人の秋山の娘・恵理奈を、衝動的に誘拐してしまいます。
赤ん坊に「薫」と名付け、母と娘として逃避行…その暮らしには、確かに絆が芽生えていました。
希和子は誘拐犯ですが、薫にとっては育ての母。
一方、秋山と妻は、子どもをさらわれた悲劇の両親として、大々的にマスコミに取り上げられ注目を集めます。
秋山の妻は、ヒステリックで子育てに向いているとはいえないタイプ。
薫(=恵理奈)にとって、どっちが幸せだったんだろう…?
たとえ恵理奈が誘拐されなかったとしても、平和な家庭はただの仮面だったかもしれません。
血のつながりって、本当に大事なのでしょうか。
いちばんの被害者は、薫(=恵理奈)なのは間違いないけれど…モヤモヤ考えてしまいます。
なんともいえないね…。
考えても答えが出ないし、ハッピーエンドには絶対なりえないのがもどかしいけれど、考えさせられる物語です。
「昨夜のカレー、明日のパン」木皿泉【ドラマ化】
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19歳で結婚したテツコは、2年後には夫の一樹が亡くなり、未亡人になりました。
残されたテツコと、ギフ(義父)は、それからずっと一緒に暮らして7年になります。
日々に散りばめられた何気ない言葉で、ゆっくりと悲しみを癒し、一樹の死をゆるゆると受け入れていくテツコとギフ。
周りの人たちに恵まれて、じんわりあたたかいお話だよね。
生きていれば日々変わっていくもの。
テツコには、岩井さんという彼氏ができました。
罪悪感なんてなくていいんだけど、どうしても、一樹に申し訳ないなって思っちゃうんだよね。
テツコとギフには、血のつながりはないし、家族の定義からは外れているのかもしれません。
ですが、程よい距離感でともに生活していて、こういう家族の形もあるんだなと思わせてくれます。
「オー!ファーザー」伊坂幸太郎【映画化】
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高校生の由紀夫には、父親が4人もいます。
しかも、この4人の父親、かなりの個性派…!
ギャンブル好き・女好き・物知り・スポーツ万能と、平凡な由紀夫とは大違いの父たち。
彼らの掛け合いは、家族というより、まるで男子校のように軽妙で、つい笑ってしまいます。
そんな彼らですが、息子のピンチには、4人力を合わせて駆けつけます。
その前に、4人そろってクイズ番組に出演しちゃったりもするけどね…。
さまざまな小事件が起こり、ひとつひとつは無関係に思えますが、最後はあっと驚く結末。
あの会話が、謎の行動が、もしかしてあれも…?と、伏線がピタッと交わる爽快感が味わえますよ。
ページをめくる手が止まらない、伊坂ワールド全開のハチャメチャストーリー。
「不在」彩瀬まる
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明日香は人気マンガ家で、5歳年下の売れない俳優の冬馬と同棲しています。
マンガ作品が舞台化したとき、役者として出会って、付き合いはじめたんだよね。
ふたりの関係はうまくいっていましたが、明日香が亡くなった父から実家の洋館を相続してから、ギクシャクしてしまいます。
父とは長い間疎遠で、母は無関心で、家族に機能不全感を抱いてきました。
もっと愛されたかった、一緒に仲良く暮らしたかった…と愛に飢えている明日香が、なんだか怖いけれどかわいそうな、不思議な感情に陥ります。
きっと明日香は、アダルトチルドレンなんじゃないかな。
これまで知らなかった、父の生きた痕跡を見て、明日香は心を乱されます。
出口のない狭い世界で、人と上手に関係を結べない明日香が、どうなっていくのか…

「さくら」西加奈子【映画化】
明るく満たされていた家族が、兄の事故、そして自殺によって、バラバラに壊れていく…。
朗らかで人気者で優しくて、完璧なお兄ちゃんだった一(はじめ)は、事故で半身不随になり、顔の半分を損なってしまいます。
それでも、家族で乗り切ろうとしたけれど、兄は自分の運命を受け入れられず、20歳のとき自殺。
次から次へと悲劇が…神様って残酷だなと思っちゃう。
美人で破天荒な妹のミキは、兄への強すぎる想いのあまり、心を閉ざしてしまいます。
美しかった母は肥満になり、父は家出してしまう…「僕」も、東京の大学に進学して家を出ました。
残ったのは、人懐っこくて愛嬌のある犬のサクラだけ。
つらい境遇を、神様の悪送球にたとえて「打たれへん」と嘆いて、命を絶った兄。
神様の投げてきたボールは、ときに意地悪かもしれません。
ですが、読み終わったあと、家族の愛、サクラの愛、大きな愛に包まれていることに気がつくはず。
「青空と逃げる」辻村深月
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母と子の日常は、1本の電話でガラガラと崩れ去りました。
劇団員の父・拳(けん)が、共演していた女優と深夜にドライブしていて、交通事故にあったのです。
もしかして不倫…?と疑惑が高まる中、拳は、妻の早苗に黙って勝手に退院してしまい、行方不明に。
ますます怪しい…!
女優が所属していた事務所はガラの悪い追手を使って、拳の居場所を探ろうとします。
早苗と、小学校5年生の力(ちから)は、彼らから逃げる形で、日本各地を転々とする逃避行へ。
早苗と力は、まったく悪いことしていないのに、理不尽だよね。
なぜ拳は姿を消したのか…その謎が徐々に明かされていき、目が離せません。
四万十や家島、別府など、各地の風光明媚な描写も美しく、ただ理不尽なだけではないのが見どころ。
不本意な逃亡生活の末に、母と子はどんな答えを出したのでしょうか?

「家族シアター」辻村深月
家族にまつわる短編7作品を収録しています。
真面目でダサい姉を見下す妹が、実は知らないところで姉に守られていたり。
アイドルオタクの弟とバンギャの姉が、いがみ合っているようで互いを意識していたり。
めんどくさいけど、あたたかくて、ぶつかりあうけど、離れたくない。
家族って距離が近いからこそ、ぶつかりあうこともあるものだよね。
特に最後の1作、「タマシイム・マシンの永遠」は秀逸ですよ。

家族は、愛しても憎んでも離れられない関係
家族は、人生で最も深い人間関係であり、切っても切れない縁があるもの。
抱く感情が愛であれ、憎しみであれ、簡単には離れられません。
家族の愛は素敵だけど、綺麗事だけじゃないもんね。
感動する作品もあれば、不気味だったり恐ろしい小説もあり、家族について考えさせられます。
小説を通じて、さまざまな家族の姿を知って、自分自身の足元を見つめ直しましょう。
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多くの人は、恋愛や失恋を経て、家族のカタチを見つけます。
失恋したときに読みたい小説をご紹介しています。

家族になるには、結婚というステップを踏むのがほとんど。
結婚観をテーマにした小説をご紹介しています。

本を読みたいけれど、かさばるから持ち運びにくい、置く場所がない…とお悩みの方には「Kindle」がおすすめ。
いつでもどこでも、片手で読めるから便利。
私は、防水のiPhoneをお風呂に持ち込んで、Kindleで読書しています。
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集英社「東京バンドワゴン」シリーズ