こんにちは。シーアです。(@seer1118b)
猟奇的なタイトルのインパクトと、衝撃的な展開に、絶賛の声が止まらない小説を紹介します。
「君の膵臓をたべたい」 住野よる
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病気で余命いくばくもない彼女と、誰とも関わってこなかった「僕」の、期間限定の物語。
果たして、ふたりはどんな時間を過ごすのでしょうか。
最後に明かされる、タイトルの意味に、涙がこぼれますよ。
「君の膵臓をたべたい」のあらすじ
「僕」は、病院で偶然1冊の文庫本を拾います。タイトルは「共病文庫」。
それは、クラスメイトの山内桜良の秘密の日記でした。
実は、桜良は膵臓の病気で、余命1年を宣告されているのです。
中高生~若年層を中心に話題になり、2016年本屋大賞第2位を受賞したヒット作。
著者の住野よるさんは、この作品がデビュー作でした。
膵臓の病気でわずかしか生きられない少女と、誰とも関わらず名前のない少年
山内咲良は、クラスの人気者で、いつも明るく、友達が多い女の子。
一方で「僕」は、他人に興味がなく、友達がいなくて、誰とも関わらず一人でも平気な男の子。
普通に暮らしていたら、交わることのなかったふたり。
ですが、「僕」が、秘密の日記「共病文庫」を見たことから、日常を共有する間柄になります。
咲良は、膵臓の病気のことはクラスメイトには内緒にしていて、一見普通に日常生活を送っています。
咲良の秘密を知っているのは「僕」だけ。そんな関係が始まります。
「君の膵臓をたべたい」という衝撃的なタイトルの意味
まず、インパクトの強いタイトルに惹きつけられます。
衝撃的で、猟奇的で、グロテスク。
そんなタイトルに反して、純粋で切ない物語です。
とはいえ、ベタベタの恋愛モノというわけではなく、さっぱりとした間柄で、お涙頂戴的なものではありません。
作品の途中から、この言葉自体は出てくるのですが、ラストで本当の意味を知ることになります。
咲良の伝えたかったこと、その真意に気づいたとき、自然と涙がこぼれました。
明るく振る舞う桜良も、きっと死ぬのは怖いはず
咲良は、死をまるでジョークのように明るく語ります。
- 「みんな明日死ねばいいのに」
- 「病気になってから、毎日生きてるって思って生きるようになった」
病気や死を扱った作品は多くありますが、そのほとんどが、暗く思いつめた雰囲気。
しかし、本作にはその悲壮感や憂鬱さはありません。
怖いけれど、「僕」が一緒にいてくれるから、明るくいられるのです。
死に向かいながらも懸命に生きるのは、人間みんな同じ
病気だからこそ、明日死んでしまうかもしれないと思うけれど、それって、病気の人に限ったことでしょうか。
私たち人間は、みんな生まれた瞬間から、いつかは死ぬ可能性を秘めているのです。
どんなに健康で若い人でも、死が訪れる可能性はゼロではありません。
まだ明日はあると思っていたのに、唐突に終わってしまう命。
私たちは、当たり前に生きているから、忘れてしまっているだけで。
17歳の少女が、死と向き合いながら前向きに生きているのに、ただなんとなく生きていちゃダメですよね。
誰かと関わることで、自分が生きる。桜良が「僕」に遺したもの
咲良は、「ひとりでいい」と他人をシャットアウトしていた「僕」に、人と関わることの大切さを教えてくれました。
それこそが、咲良が「僕」に遺したもので、咲良の生きたしるしなのでしょう。
誰かを認める、誰かを好きになる、誰かを嫌いになる、誰かと一緒にいて楽しい、誰かと一緒にいたら鬱陶しい、誰かと手を繋ぐ、誰かとハグをする、誰かとすれ違う。それが、生きる。自分たった一人じゃ、自分がいるって分からない。
誰かとコミュニケーションをとることが、日々のエネルギーになる…。
咲良がいなくなったあと、「僕」は他の人とも関わるようになりました。
「僕」の中に、咲良のDNAが息づいているってことですから。
「僕」の名前が最後に明かされた意味
主人公の名前が出てこず、一人称の「僕」のまま、ラストシーンを迎えます。
名前とは、自分ひとりだけが存在するなら、必要のないもの。
誰か、他の人から、自分を自分と認識してもらうための名前。
「僕」は、咲良と出会うまで、他人と関わりを持たずに生きてきました。
そのままでは、名前は必要なかったでしょう。
ですが、咲良と出会って、名前が必要になりました。
「僕」にとって、初めて名前を読んでくれる相手が咲良だったのです。
最後に、主人公の名前が明かされます。
桜良と出会って変わっていき、咲良と永遠の別れを経たこれからの「僕」には、きっと名前が必要です。
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「君の膵臓をたべたい」実写映画では、12年後の世界が見られる
小説を読んでから、映画を観るのもいいし、映画がきっかけで原作を読んでみたいと思う人もいるので、双方に好循環が生まれますね。
山内咲良は、浜辺美波さんが演じます。「僕」は北村匠海さん。
さらに、原作にはない、12年後の「今」が描かれています。
成長して、母校の教師になった「僕」を小栗旬さんが演じ、親友の恭子を北川景子さんが演じます。
咲良が生きたかったはずの未来を、生きているふたり。
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