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三木笙子「怪盗の伴走者」ロータスと安西の過去と現在【帝都探偵絵図シリーズ4】【あらすじ・感想】

こんにちは。シーアです。(@seer1118b

怪盗の伴走者 〜怪盗ロータスの過去と現在に迫る4作目〜

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  • 内容紹介(Amazonより)

帝都を騒がす大怪盗ロータスが盗みに失敗した!

東京は浅草の高層建築「凌雲閣」。その一角に飾られた油絵を盗もうとした怪盗は、番人に見つかり絵を置いて逃げたというのだ。この椿事は記者の高広の耳にも届く。

ロータスは高広とも天才絵師・礼とも因縁浅からぬ相手、ただ失敗したとは思えない。高広と礼が調査を始めると、ロータス一連の窃盗事件の主任検事となっていた安西と再会する。

怪盗と検事、今は敵対関係にあるが、かつては昔馴染みであり並んで駆け抜けた時代があったのだ。決別した二人がついに相まみえる。

大好評〈帝都探偵絵図〉シリーズ第四弾。

怪盗ロータス、再び登場。盗みに失敗するが…

雑誌記者の里見高広と、天才美形絵師の有村礼のふたりが、「腰の低いホームズと高飛車なワトソン」として、数々の事件を解決していく「帝都探偵絵図シリーズ」。

シリーズ4作品目は、前作「人形遣いの影盗み」で、浅からぬ因縁を匂わせた、怪盗ロータスと安西検事がメインです。

高広と礼と同じように、彼らもかつては深い友情で結ばれた仲でした。

しかし、今は別々の道を歩み、むしろ敵対していると言ってもいい関係です。

彼らの過去に何があり、これからどうなっていくのか。メインストリームと重なり合うドラマです。

怪盗ロータスは、盗みに入って失敗するという、彼らしからぬ騒ぎを起こします。その目的は何だったのでしょうか…?

3つの短編を収録 〜おすすめは表題作「怪盗の伴走者」〜

本作では、表題作の「怪盗の伴走者」をはじめ、3作品からなっています。短編から中編と言っていい長さの作品たちです。

導入部分では、「人形遣いの影盗み」のラストシーン直後の、安西の独白から始まります。間を空けずに続けて読むと、さらに臨場感が増すことでしょう。

  • 第一話 伴走者
  • 第二話 反魂蝶
  • 第三話 怪盗の伴走者

怪盗になる前、ロータスは、「蓮」と名乗っていました。第一話「伴走者」と、第二話「反魂蝶」は、蓮と安西省吾のなれそめ、そして冒険譚を綴っています。

第三話は、怪盗と検事という、全く相容れない立場になった彼らの現在の姿です。

第一話 伴走者

安西省吾は、家庭の不和から、暗い少年時代を送っていました。そんな時、米問屋に奉公している蓮に出会います。太陽のように明るい蓮に、次第に心惹かれていきます。

蔵に忍び込んで、隠された金を探すという冒険を経て、彼らの絆はより一層深まります。

「ありがとう、省吾」

蓮がしゃがみこんで笑顔を見せた。

「おかげで助かったよ。君に会えて、僕は本当に運が良かった」

「蓮……」

「君なら僕と同じ速さで走ることができる」

蓮の言葉通り、信頼のおける友人となるふたり。

ですが、省吾は、あまりにも鮮やかで常人離れした蓮のやり口に、いつか蓮が自分を置いていってしまう予感がしていたのです。

第二話 反魂蝶

第一話「伴走者」から2年が経った頃、正午の母は亡くなり、一人で暮らしていたある日。

蓮は知り合いの奇術師、一翔斎天馬の紹介で、鹿取という男の頼みを聞くことになります。「山神様の蝶」と言われる禁忌の蝶を捕まえてしまったといいます。

人の嫉妬や欲を逆手に取ったような企みに、蓮は奇術まがいの手で迎え撃ちます。

省吾は「人を羨ましいと思ったことがない」という蓮に、空恐ろしいような気持ちになります。

いずれ、省吾は蓮についていけなくなるだろう。

気持の上でか、能力においてか、それともその両方なのかもしれなかったが、省吾は蓮と共に走ることができなくなる。

それは、はっきりとした予感だった。

そのときの自分を、蓮はどんな目で見るのだろうか――。

第三話 怪盗の伴走者

語り部が高広にバトンタッチされ、何とも言えない安心感と、懐かしいような気持ちになります。

そう思ったのもつかの間、浅草に取材に来ていた高広の前に、唐突にロータスが現れ、凌雲閣という電気の広告塔に連れてこられます。

怪盗ロータスを逮捕するため、検事局は安西を主任検事に抜擢します。なんとしても、ロータスを自分の手で捕まえたい、という安西。

二人の間に過去に何があったのか、礼は聞きたがりますが、高広は遠慮してはっきりとは言えないでいます。

誰もがそれぞれに事情を抱えている。

ただ興味があるからというだけで、土足で踏みこむことに、高広はためらいを覚える。

何もかも明るみにさらけだして、一体、何になるというのだろう。

隠された真実を見つけだす能力が自分にあるとしても、それを振りまわすことは憚られた。

何かできるなら力になりたかったが、人が胸の奥底に抱いている想いを、なるたけそのまま大切に守りたいと思うのだ。

しかし、ふたりとも結局は高広のことを信用しています。

高広に対して、ロータスは「勘だよ。君がいれば悪いようにはならない気がする」 と言い、安西もまた「悪いようにはならない気がして――」と同じことを言うのです。

ロータスが予告した犯行現場に、高広と礼も招き入れられます。そこで起こった出来事は、想像を超えたものでした。

友情とは? 絆とは? 考えさせられるラスト

成長し、怪盗ロータスとなった蓮は、きっと孤独だったのでしょう。才能がありすぎる人間は、時として常人には理解できないものです。

結果として、ロータスはいちばん手に入れたかったものを、その手にしたといえます。しかし、それはとても幸せな結末とはいえないやり方でした。

ロータスと安西の関係は、高広と礼のそれとは、近いようで全く異なります。彼らとの違いはなんだったのか…。友情について考えさせられます。

ロータスも、安西も、自分の選択に納得できているといいなと願うばかりです。

シリーズ続編を楽しみに待機中!

現段階では、この「怪盗の伴走者」が最新作で、帝都探偵絵図シリーズの新刊は出ていません。

ですが、これだけ世界を広げておいて、このまま終わるはずがないと思っています。

作者の三木笙子さんは、デビュー当時から「仕事や勉強の後にほっとした気持で読むことができる小説」を目指しているそうです。

「優しくて暖かな雰囲気」「心地よい哀しみと快い切なさ」「読後感の良さ」の3つをご自身の主義として挙げていらっしゃいます。

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帝都探偵絵図シリーズは、1作品ごとに紹介記事を書いています。

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