📕「店長がバカすぎて」早見和真
— シーア🍀よくばりブロガー (@seer1118b) August 14, 2020
タイトルから想像してたのと違う感じだった…!
書店員さんのお仕事がすごくリアル👀
キラキラして見えるけれど、どんな職業も大変なんだな🤭
まだ読みかけだけど、本屋大賞ノミネート作品だったのもうなずける🌈
もっと早く読めばよかった〜! pic.twitter.com/2GZVlR7br1
本が好きな人は、きっと一度は「本屋さんで働いてみたい」と夢見たことがあるはず。
でも、本屋さんの仕事って想像以上に大変なんだよ…!
書店員の実態をリアルに描きつつ、ちょっとしたミステリーを加えた作品をご紹介します。
売りたい本を注文しても入荷されない、店長や社長がわからずや、出版社の営業や小説家との格差、理不尽な買取制度…。
あまりにもリアルで生々しくて、全国の書店員さんから「よくぞここまで」と驚嘆の声が上がるほど。
正直なところ、主人公の書店員、谷原京子にはモヤモヤする部分もあったのですが、それも含めて読んでよかったと感じましたよ。
「店長がバカすぎて」を紹介するよ!
「店長がバカすぎて」早見和真|登場人物
「店長がバカすぎて」は、郊外の中規模の本屋さん、武蔵野書店を舞台にした作品です。
- 谷原京子…主人公。28歳独身で、武蔵野書店の契約社員。とにかく本が好きで、小柳さんに憧れて書店員になった。
- 山本猛…武蔵野書店 吉祥寺本店の店長。自己啓発本に感化されやすい、おとぼけキャラ。
- 小柳真理…谷原の憧れの先輩。京子のよき理解者だったが、諸事情で退職することに。
- 磯田真紀子…プライドが高く気が強いアルバイト。谷原に憧れて書店員になった。
- 木梨祐子…武蔵野書店のアルバイトだったが、大手出版社の往来館に就職。
その他、デビュー作は良かったけどその後が微妙な作家や、謎の覆面作家、お店の常連さんなど、いろいろな人が登場します。
本屋さんって、作家さんとも交流があるんだもんね。憧れちゃう!
だけど、新作を売りたいのに、前作のほうがおもしろい!とか、言いにくくなるよね…。
「店長がバカすぎて」早見和真|あらすじ・内容
「店長がバカすぎて」は、書店員の谷原京子が、本屋さんに関わるいろいろな「バカ」に振り回されるコメディタッチの作品。
- 第1話 店長がバカすぎて
- 第2話 小説家がバカすぎて
- 第3話 弊社の社長がバカすぎて
- 第4話 営業がバカすぎて
- 第5話 神様がバカすぎて
- 最終話 結局、私がバカすぎて
京子は、本が好きで、憧れの小柳さんを追いかけて書店員になりました。
だけど、現実はうまくいかないことばかり…!
「非」敏腕店長は、仕事ができないし間が悪いし、本屋の店長のくせにたいして本を読まないし、何かとイライラさせられます。
やたら長い朝礼では、自己啓発本の受け売りの言葉を並べるばかり。
それでも、本が好きだから今までやってきたけれど、売りたい本は注文しても入らず、文芸の売り上げが落ちたと責められ、売りたくもない雑貨コーナーを作らされます。
本が売りたくて本屋さんになったんだもん。悔しいよね。
薄給なのに、面倒なお客さんに振り回されて、「お客様は神様です」という使い古された言葉にも反感を覚える有様。
極めつけは、年末恒例、往来館の雑誌「レッツゴー奥さま」を強制的に購入させられる制度。
なぜなら、特定の商品を販売すると、出版社から書店に報奨金が出るから。
会社だけでなく、従業員にも分配されるけど、もちろん全額ではなく雀の涙…契約社員だからボーナスも寸志程度です。
自分よりはるかに高給取りの出版社の社員たちのボーナス、薄給の書店員の契約社員が払っているみたい…。
「今度こそ辞めてやる」と、退職届をカバンに忍ばせるものの、やっぱり本が好きだから辞められない。
夢だったはずの書店員になっているのに、全然キラキラしていない…。
店長は本当にバカなの? それともバカのフリをしているだけで、全部計算?
最後に、正体不明の覆面作家の謎も解き明かされるよ!
「店長がバカすぎて」早見和真|書店員はやりがい搾取?
書店員は薄給だっていうけど、本当なんだね。正社員にもなれず…。
京子は、武蔵野書店の契約社員として、時給998円で6年働いてきました。
ほとんど東京都の最低賃金。ちなみに、入社してから一度も時給は上がっていません。
「店長がバカすぎて」の初版当時の2019年、東京都の最低賃金は985円でした。
本が好きで、良い本を手にとってもらうお手伝いがしたいだけ。
小柳さんのセリフを借りると、「物語を売っている」ことが好きだから。
だけど、書店員だって生活していかなきゃいけないわけで、仕事となると純粋に好きなだけではいられないのです。
「店長がバカすぎて」早見和真|書店員の待遇改善のために抗おう
待遇に不満を募らせながらも、面倒だからと人事考課表の自己採点を「1」にし続けてきた京子にも責任があると思う。
木梨さんにも、受け身すぎるって指摘されてたよね。
だって、自己評価が低いってことは、たいした仕事をしていないと自分から言っているのと同じ。
少なくとも、会社側はそうとらえるでしょう。
自分は店長よりもずっと書店に貢献している、評価に値する人間だと主張したければ、自ら動かなくては伝わりません。
京子は、ずっと契約社員で世間知らずだし、シンデレラ気質なのかなと感じます。
つまり、自分から「正社員になりたい」「私はこんなに頑張っている」とガツガツアピールしなくても、見る人が見ればわかってくれると、どこかで期待していそう。
そして「あなたこそ武蔵野書店に必要な人材だ」と言って、拾い上げてくれるはずだと。
もしそうだとしたら、夢見すぎ…!社会はそんなに甘くないよ。
書店員の待遇が悪いままでは、素晴らしい本を届ける人がいなくなってしまう。
愚痴ってるだけじゃなく、具体的に建設的に抗っていかなくては、業界は変わりません。
渦中にいると、日々の忙しさに飲み込まれちゃうのも、わかるけどね。
「店長がバカすぎて」はタイトルで損をしている
実は、タイトルで敬遠していた部分もあったんだけど、読んでみてよかったよ。
「店長がバカすぎて」というタイトルには、なんだか不遜というか、周囲の人をバカにしているのかなと、上から目線な印象を持っていました。
ですが、実際に書店員が抱えるモヤモヤを知ると、共感する気持ちに。
そりゃ大変だよね…。
著者の早見和真さんは、インタビューの中で、徹底的に取材して書店員さんの愚痴や悩みを聞いたと語っています。
書店を舞台にすること、作品中に本屋大賞を思わせる賞の言及があることから、「本屋大賞を狙っているのではないか?」と勘ぐってしまいます。
著者自ら「本屋大賞を目的に本を書くようになったら終わりだ」と語っています。
結果的に、本屋大賞ノミネート作品に選ばれたのは、本当に読んでよかったと感じた書店員さんが多かったという証。
なぜなら、書店員はお世辞や付き合いのために、イマイチな本を「おもしろかった」とは言わないプライドがあるから。
京子もそうだったもんね!(一度は失敗しちゃったけど…)
「店長がバカすぎて」早見和真|まとめ
「店長がバカすぎて」は、本を愛するすべての方におすすめ!
現役・元書店員の方には、「あるある」「わかる」と共感できること間違いなし。
本気で辞めようと心に決めたときに、思いがけない本と出会って、引き止められてしまう…そんな力を持っています。
書店業界だけでなく、今の仕事や待遇に不満がある方にも、「もう一度戦ってみよう」と思わせてくれますよ。
ラストのサプライズや、伏線が一気につながる感覚は、ミステリー好きの方も満足できるはず。
今の環境から逃げ出す前に、最後の悪あがきするのもいいかもね!
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「店長がバカすぎて」は、2020年本屋大賞ノミネート作品。結果は9位となっています。
2020年本屋大賞に輝いたのは、凪良ゆう「流浪の月」でした。感想記事を書いています。
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