辻村深月「かがみの孤城」 不登校の中学生たちの、絆と闘いの1年間。【本屋大賞受賞作】【ネタバレなし】【あらすじ・感想】

こんにちは。シーアです。(@seer_1118

本屋大賞受賞作、辻村深月「かがみの孤城」

辻村深月さんがついに本屋大賞を受賞されました。「かがみの孤城」は、中学生が主人公の、現実世界にミステリーとファンタジーを少しずつまぶしたようなお話です。

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  • 内容紹介(Amazonより)

あなたを、助けたい。

学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた――
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。

傷ついたこころを誘う、不思議な光る鏡

中学1年生の安西こころは、入学したばかりの中学校で、リーダー格の女子に目をつけられて、決定的な出来事を経て、学校に行けなくなってしまいます。

大人たちははっきり言わないけれど、大勢の中に溶け込めなかったのでは、ケンカをしただけじゃ…という空気を感じてしまいます。

本当のことを言えず、ただただ怖い、お腹が痛いと言って部屋で過ごす日々。

そんなある日、部屋にあった鏡が光り始めます。

鏡を通り抜けた先の世界には、こころと同じように、学校に行っていないであろう、同年代の子達がいました。

  • ハキハキした美人のアキ。
  • メガネでアニメ声のフウカ。
  • ゲーム好きで皮肉屋のマサムネ。
  • 物静かで紳士なスバル。
  • 小太りで恋愛体質のウレシノ。
  • サッカーが得意なイケメンのリオン。

そして、「オオカミさま」。オオカミさまが言うには、この城には「願いの部屋」があり、その部屋の鍵を見つけた一人だけが、扉を開けて願いを叶える権利がある…期限は3月30日まで、城が開いているのは朝9時から夕方5時まで。

何のために? なぜ自分たちが? 様々な疑問を抱えながら、約1年間の、不思議なお城へ通う日々が始まったのでした。

中学生のアンバランスで矛盾だらけで繊細な感情を描く

登場人物は13〜15歳の男女7人。中学生は、子どもから少しずつ大人になる、繊細で傷つきやすいアンバランスな時期です。

彼らは、数々の矛盾をはらんでいて、気にしすぎなくらい気にするくせに、自分勝手でもあります。

誰にも理解されないと心を閉ざしたり、それでいて誰かに聞いてもらいたいと思ったり。

「もういい」と突き放してみたり、「ついていけない」「置いていかれる」と思うと焦ったり。

自分がどう思われているかという自意識が強すぎて、変なところで気を使ってしまったり。

辻村さんがデビュー当初から描いてこられた、ティーンエイジャーたち。

ああ、こうして自分も傷ついてきた、と身近に感じる一方で、大人になった今は、遠くなってしまった感覚を呼び覚まされるような気分です。

我が子も同年代。思春期の子どもにピッタリの本

私自身、長男が中学校1年生になったばかりです。

長男の中学校は、6つの小学校から集まってきた子どもたちが、5クラスにみっちり詰まっています。同じ小学校の子、小学校は違うけど保育園で一緒だった子、初めて出会う子…

ちょうどそういう時期だからこそ、身につまされる思いで一気に読みました。

長男のクラスにも、友達とうまくいかない、生きにくい、辛い思いをしている子がいるのかもしれないと想像すると、何とも言えない気持ちになります。

当の本人は「学校楽しい〜」と言っているので何よりですけどね。

今は、あまり活字を読まない子ですが、この本はいつか彼がもっと成長したときに、読ませてみたいなと思います。

親になった大人にも読んでほしい作品

大人になった私は、母親として、 こころのお母さんの気持ちが痛いくらい分かります。

こころの意志を尊重して、無理に学校に行きなさいとは言わないようにしているけど、お母さんだって人間です。初めての子育てです。

我が子の不登校に、なんとも思わないわけがありません。

娘は、なぜ学校に行けないのか話してくれない。でも、話したくないのかもしれないから、聞けない。

ぶつけるところのない焦りと、期待と失望。どうしようもない虚しさ。

仕事が忙しくて、日中家で一緒にいられるわけじゃない。だけど、ある日、ふいに昼間に家に帰ってきてみたら、娘がいない…(鏡の世界に行っているから)

不登校の娘が家で一日何をしているか、親なら、普通に心配じゃないですか。そんなの当たり前です。

だけど、こころは「抜き打ちチェックみたいなことをされた」「お母さんに信用されていなかった」と感じて、怒ります。

うわぁ、こんなに心配してもらって、尊重してもらっているのに、怒っちゃうのか…

それが偽らざるこころの気持ちだし、思春期の子どもは、与えられる愛情に無自覚なものです。

それが分かっていても、子育ての理不尽を知っているから、お母さん側の気持ちになってしまいます。

大人になると、つい、子ども側の感情を忘れてしまいがちです。相互理解のためにも、大人の人にこそ読んでほしいなと思います。

ポプラ社の広報誌「asta*」で連載

この作品は、ポプラ社の広報誌「asta*」に、冒頭部分だけ連載されていました。当時、購読していたので、ちょうど読んでいたんです。

ハードカバー版で言うと「八月」の途中、ウレシノがキレたあたりまで掲載されていて「続きは単行本をお楽しみに」で終わっていたのを覚えています。

単行本化されるまでには、1年以上の期間があり、その後追いかけることができていませんでした。

大幅な加筆修正が入っているそうで、冒頭部分を読んだことがあった私も「もともとこんな感じだっけ?」と思う箇所がいくつもありました。

全体を調整されて、より作品としての完成度が高くなっています。

「asta*」の連載小説は、有名になる前の作品に先に触れられるので、おすすめですよ。

単行本になって、評価されたときに、なんだか誇らしい気持ちになります!

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辻村深月さんの小説は、どれも素晴らしいです。他にも「島はぼくらと」の感想記事を書いています。

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