こんにちは。シーアです。(@seer1118b)
辻村深月さんの、作家生活15周年を記念した新作は、「結婚」の価値観を問いかける作品。
30代の主人公たちの、結婚にまつわる自意識や自我、周囲との対立を描いています。
本当の意味で自立するとはどういうことか…考えさせられます。
「傲慢と善良」辻村深月
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嘘は良くない。人を疑ってはいけない。
他人に点数をつけるなんて、はしたない。
そう教えられてきたのに、いざ結婚適齢期になると、恋愛の駆け引きや、人を値踏みすることを覚えないといけない。
人生って、綺麗事じゃない。
生きる苦しみや辛さに寄り添うような、新たな代表作の誕生です。
「傲慢と善良」のあらすじ
- 西澤架(にしざわかける)
- 坂庭真実(さかにわまみ)
ふたりは、恋人同士。
真実は、ストーカーにつけられていました。
ある日、真実が家に帰ると、部屋の明かりがついていて…「ストーカーが家にいる」と、泣きながら架に電話してきました。
友達と飲み会をしていた架は、慌てて自宅に戻り、真実を自分の家に呼び寄せます。
この事件をきっかけに、同棲するようになったふたりは、結婚しようと決めたのです。
しかし、その後、真実は唐突に姿を消してしまいました。
架がプレゼントした婚約指輪は、真実の部屋に残されたまま。
真実はどこに行ってしまったのか…果たして無事なのか?
架は、真実を探します。手がかりを求めて真実の故郷・群馬へ…。
婚活の苦悩|結婚がすべてじゃないと分かっていても…選ばれない屈辱
結婚をめぐる考え方、意識のあり方が、本作の大きなテーマ。
架と真実は、婚活アプリで出会いました。
現代は、結婚しなくても生きていける社会。
ひとりでも楽しめることがたくさんあります。
だけど、誰かと一緒に生きたい、自分も誰かに選ばれたい…。
学生時代の友人や、職場恋愛など、自然な出会いに憧れる一方で、年齢や周囲の圧力など、刻々と迫るタイムリミット。
そこで、最近流行りの婚活アプリや、昔ながらの結婚相談所にも、出会いを求めます。
イチから自分を知ってもらうステップ、積み上げていく関係性、テンプレ的なやり取り…。
お互いの条件から始まる関係だから、「ピンとこない」なんてことももちろんあります。
架も、真実も、「結婚」にとらわれて、本当のことがわからなくなってしまったのかもしれません。
親の干渉|子どもの自立を妨げる、親のストーリーに「NO」を突きつけよう
真実の母親は、真実が自分のことを何一つ決められない子だと、いつまでたっても子供扱いしています。
希実(真実の姉)に言わせると、「自分のストーリーが強い」タイプ。
真実が、地元のお嫁さん候補としてふさわしい女子高・女子大に進学したこと。
父親のコネで、県庁の臨時職員(非正規)に就いたこと。
どちらも、母親の自慢で、「真実は人が良くて、いい子だから」と手放したくないストーリーなのです。
母親は、いい相手と結婚させるために、真実に黙って、結婚相談所に登録して、お見合いの話を進めてしまう。
真実は、そんな母親から逃げ出したかったから、東京で一人暮らしすることにしたんです。
結婚しなきゃ一人前じゃない…本当にそうでしょうか。
親に決められた相手とお見合いしても、親のレールに乗っていることに変わりありませんよね。
この物語は、真実の本当の自立を目指すストーリーでもあるのです。
「傲慢と善良」は、J・オースティン「高慢と偏見」のオマージュ
「傲慢と善良」というタイトルは、なんだか固そうというか、少しとっつきにくい印象。
いつもの辻村深月作品とは、ちょっとタイプが違います。
この作品は、イギリスの作家ジェーン・オースティンの代表作「高慢と偏見」を思わせるタイトルをつけたそうです。
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「高慢と偏見」は、18世紀末〜の女性の結婚観や、誤解と偏見で生まれる男女の行き違いをテーマにしています。
当時、女性が自立できる職業はほとんどなく、家柄や相手の男性に依存した生き方を強いられていました。
結婚できなければ、一生独身…その事実が持つ意味は、現代よりずっと深刻なのです。
昔よりも今の方が、結婚観や女性の立場が良くなっているのは間違いありません。
だけど、選択の自由があるからこそ、現代には現代の苦悩があります。
- 傲慢…誰しも「自分が選ぶ立場だ」という意識がある。相手に選ばれる立場でもあるのに。
- 善良…ちょっとした嘘も、恋の駆け引きのうち。正直すぎてもバカを見る。
結婚はゴールじゃないけど、結婚にたどり着くまでに、自分が選抜されてきたことは確か。
「傲慢と善良」は、現代の結婚観を見つめ直す作品
ふたりの始まりが、婚活アプリだったとしても、人間関係はいつも生身で発展するもの。
出会い方が変化しても、実は人間はなにも変わっていないのかもしれません。
100%の正解なんて、どこにもない。
だから、悩むし、疑うし、騙すし、悔しいし、泣いたり笑ったりするのです。
独身、既婚、恋人がいる人、いない人…婚活に縁がある方も、ない方も、それぞれの価値観で読める作品です。
あなたは、どんな感想を抱くでしょうか?
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辻村深月の他の作品をご紹介
辻村深月さんの作品は、どれも人の心の機微をとても繊細に描いています。
「かがみの孤城」は、本屋大賞受賞作品で、不登校の中学生が主人公。
いじめにあって、学校に行けなくなるこころの感情が、痛いくらい突き刺さります。
「島はぼくらと」は、離島に暮らし、いずれ島を出て行く運命にある高校生4人の青春物語。
地元民と移民の確執、医師不足や過疎化など、離島ならではの問題提起も見どころ。
本を読みたいけれど、かさばるから持ち運びにくい、置く場所がない…とお悩みの方には「Kindle」がおすすめ。
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