小説

「クローバー・レイン」大崎梢~本が好きなすべての人に捧げるお仕事小説【あらすじ・感想】

こんにちは。シーアです。(@seer1118b

クローバー・レイン ~編集者の熱意と努力!1冊の本ができるまで~

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  • 内容紹介(amazonより)

作家=小説を書く人。
文芸編集者=小説のためになんでもする人。

老舗の大手出版社に勤める彰彦は、過去の人と目されていた作家の
素晴らしい原稿を偶然手にして、どうしても本にしたいと願う。
けれど会社では企画にGOサインが出なくて――。
いくつものハードルを越え、本を届けるために、奔走する彰彦。
その思いは、出版社内の人々に加えて、作家やその娘をも巻き込んでいく。
本に携わる人たちのまっすぐな思いに胸が熱くなる一作。

偶然手にした、ピークを過ぎた作家・家永嘉人の作品

主人公は、大手出版社・千石社の文芸編集者、工藤彰彦。

彰彦は、落ち目の作家・家永嘉人の原稿を偶然読むことになりました。それが「シロツメクサの頃」です。

感動のあまり、その場で「うちで出させて下さい」と頼み込み、預かります。

熱意・交渉・戦略! 大手出版社の裏事情と戦う

しかし、そう簡単に事は運びません。

話題の作家の作品なら引く手数多なのに、知名度のない作家の作品は、どんなに内容がよくても、出版されるまで一苦労。

この作家じゃ話題性がない、売れない、千石社はそんな作家は相手にしない、他社で出して賞を取ったらうちでも出版してもらおう…などなど、大手出版社のお高くとまった対応に、うんざりしてしまいます。

良い本と売れる本は違う、というのが出版業界の本音なのでしょう。それは、私たち消費者にも責任の一端があるのかもしれません。

しかし、現状に文句を言っていても解決しません。彰彦は諦めず、熱意と交渉と戦略を武器に、「シロツメクサの頃」の出版を目指します。

良い作品を自分の手で世に出したい。「シロツメクサの頃」を出版したい!

彰彦は、今まで順風満帆、人生すべて第一希望、大物作家の担当を任されて、うまくいってきた人でした。

だからといって、いけ好かないやつではありませんが、世間知らずではありました。

出版社の歯車として、大物作家の著作を出版するだけで、自分から「上に反対されても、この本をどうしても出したい!」と声を上げることはなかったのです。

そんな彰彦が、上に反対されてでも絶対出版したいと願った原稿が「シロツメクサの頃」です。並々ならぬ思い入れで、徐々に周囲の人を動かしていきます。

家族のあり方を考えさせられます

家永は、娘の冬実と折が悪く、他にも家族との確執を抱えていました。

家永が「シロツメクサの頃」に入れた詩は、冬実が書いたものだったため、彰彦は編集者として「このまま使わせてほしい」と交渉します。

一方で、彰彦にも、複雑な関係の家族がいます。「シロツメクサの頃」を出版することは、どちらにとっても、わだかまりを少し溶かすことにつながる、と信じていました。

家族って、外側からはわからないけれど、いろいろありますよね。幸せそうに見える人も、きっといろいろ抱えているのかもしれません。

協力者、ライバル…人間ドラマにも注目

彰彦ひとりの力では、到底出版までこぎつけられません。先輩編集者の赤崎や、編集長、家永の前々任の担当編集者・鈴村など、多くの人の協力が不可欠でした。

「シロツメクサの頃」の販売部数を伸ばすために、営業の若王子(すごい名前ですよね)にも協力を願い出ます。

彰彦は、若王子との交渉で、恵まれた立場からではなく、相手のメリットも考えて依頼することを学びました。

ライバルの相馬出版の編集者・国木戸とは、言い合いになったり、やけ酒に付き合わせたり、またやりあったり、いい関係です。

国木戸の方が先輩なのですが、だんだん彰彦の態度がざっくばらんになってきます(笑)。

また、最も見逃せないのが、家永の娘である冬実との関係です。編集者として、作品のために、家永先生のために…という壁を越えたときが、見どころですね。

誰かの「雨」になりたい

1冊の本ができ、人の手に渡り読まれるまでに、こんな過程があるなんて、この作品を読むまで考えもしませんでした。

しかも、出版して終わりじゃなくて、その後売れなければ、やっぱり消えてしまいます。

「シロツメクサの頃」に出てくる、冬実の書いた詩の中に、「雨になりたい」という言葉があります。

私の今手にしている本も、感動した誰かの力でここまできて「雨」になったのかもしれません。誰かの行動が、いつかの自分を濡らす雨になって、その後の自分を形作っていく…

私も、誰かの雨になれているだろうか。そんな自問をしてしまいます。大崎梢作品の中でも特に好きな1冊です。

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購入するなら、文庫本のほうが手軽で持ち運びやすくて良いのですが、装丁は、単行本の方が好きです。彰彦より「シロツメクサの頃」が主役って感じられるから。

文庫本の表紙を見て「彰彦ってメガネなんだ~」って思いました(そこかよ)。

大崎梢さん他の著作~日常の謎、書店ミステリー

大崎梢さんは、元書店員で、本屋さんや出版社、出版社と本屋さんの間に立つ「取次」を主人公にした作品を多数執筆されています。

日常の謎と言われるジャンルの、ライトなミステリーを多く書かれています。

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