小説

「早朝始発の殺風景」青崎有吾|気まずさでできた密室で起こる、小さなミステリー

stomy-morning-first-train

始発電車で、あまり親しくない同級生とばったり出会う。

放課後のファミレスで、幼馴染と心がすれ違う。

地元の遊園地の観覧車で、後輩と二人きり。

離れて暮らす兄妹が、捨て猫を巡ってケンカ。

卒業式を欠席した、孤高のクラスメイトに、卒業証書を渡しに行く。

シーア
シーア
なんだか…どれもこれも、気まずい雰囲気…。

そんな気まずさをスパイスにした、青春時代の甘酸っぱい短編集をご紹介します。

青崎有吾さんは、今私が最も注目している若手作家。

ミステリーの中でも「日常の謎」が好きな方には、絶対ハマるはず!

シーア
シーア
「早朝始発の殺風景」を解説します!

連作短編集のおすすめ記事でも、「早朝始発の殺風景」をとりあげています。

short-series
連作短編集のおすすめ17選!長編とも短編とも違った魅力連作短編集は、短いお話の中に、凝縮されたエッセンスが詰まっていて、それらが関連し合いながら進んでいきます。ひとりの主人公の視点ではわからなかった事実を知ることも。それぞれに異なる登場人物の語りで、世界観を掘り下げていくことができ、より深くテーマを味わえます。そんな魅力たっぷりの連作短編集をご紹介します。...

「早朝始発の殺風景」のあらすじ

青春は、気まずさでできた密室だ。

このワンフレーズが、「早朝始発の殺風景」を端的に物語っています。

5つの短編は、すべて場面転換なしのワンシチュエーション、リアルタイムなストーリー進行。

青春時代の気まずい密室は、いたるところにあるのです。

  1. 早朝始発の殺風景
  2. メロンソーダ・ファクトリー
  3. 夢の国には観覧車がない
  4. 捨て猫と兄妹喧嘩
  5. 三月四日、午後二時半の密室

シーア
シーア
どれもちょっとした謎があるんだよね。

ライト
ライト
ひとつひとつ紹介するね!

第1話|早朝始発の殺風景

加藤木くんは、早朝の始発電車で、あまり親しくないクラスメイトとばったり出会ってしまいます。

シーア
シーア
こんな時間には、知り合いは誰もいない、と思っていたのに…。

彼女は、どうしてこんな時間に学校に向かう電車に乗っているのか?

部活でもない、会いたい人がいるわけでもなさそう…。

ライト
ライト
まぁ、なんで始発に乗っているのか謎なのは、自分もだけどね。

学校の最寄り駅まで、探り合いの気まずい時間が始まります。

第2話|メロンソーダ・ファクトリー

真田と詩子とノギちゃんは、放課後のファミレスで、ドリンクバーを頼んでダラダラおしゃべりするのが日課。

くだらないことで笑ったり、愚痴ったり…。

シーア
シーア
なんか、青春って感じ!

ところが、クラT(=クラスTシャツの略)のデザイン案の話から、思いがけずギクシャクしてしまいます。

ライト
ライト
なんでこうなっちゃったんだろう…?

第3話|夢の国には観覧車がない

幕張ソレイユランドは、某ネズミの夢の国とは違って、良くも悪くも「それなり」の遊園地。

部活の引退記念で訪れた寺脇は、ひそかに想いを寄せる葛城と一緒に回りたいと思っていましたが…

なぜか、後輩の伊鳥くんと観覧車に乗る羽目に。

伊鳥の行動に違和感を持って、彼の意図を考え始めます。

シーア
シーア
ところで、登場人物、みんな男の子だよね? ちょっと葛城の性別がわかんなかった!

ライト
ライト
ジェンダーフリーなんじゃない?

第4話|捨て猫と兄妹喧嘩

親が離婚して離れ離れに暮らす、兄と妹。

公園のレストハウスで、ふたりが向かい合う…その間には、ダンボールに入れられた捨て猫。

猫アレルギーの妹が、アニキに飼ってほしいとお願いするけれど、険悪なムードに…。

シーア
シーア
なんで?そんなにネコ嫌い?

ライト
ライト
事情があるのかな…?

第5話|三月四日、午後二時半の密室

クラス委員の草間さんは、高校の卒業式を欠席した煤木戸さんの家に、卒業証書を届けに行きます。

煤木戸さんは、孤高の存在で、女子同士の馴れ合いに交わらないタイプの、とっつきにくいクラスメイト。

シーア
シーア
ど、どうしよう…気まずいよね…。

ですが、煤木戸さんの態度はどことなく違和感があるのです。

ライト
ライト
何か隠してる…?

高校生たちの生活と小さな謎の、バランスがいい小説

日常のワンシーンを切り取ったような、気まずい密室で交わされるやりとり。

明るい、笑えるような話ではなくて、どこかぎこちない…。

シーア
シーア
それなのに、不思議と読後感はすっきり。

不器用な会話を通じて、小さな謎が、ひとつひとつ浮かび上がったり、ほぐれたり。

そのバランスがとても良いのです。

5つのストーリーのその後を結びつける、エピローグがとてもよかったです。

ライト
ライト
あのあと、こうなったんだな〜って感じだね!

最後は、ふっと力が抜けるような感覚。

読み終わったあとも、彼らの日常が、この私鉄沿線で続いている気がします。

青崎有吾は、今注目の若手作家|鮎川哲也賞受賞

青崎有吾さんは、2012年に「体育館の殺人」で鮎川哲也賞を受賞して小説家デビューされた、1991年生まれの若い作家さんです。

gymnasium-murder
「体育館の殺人」青崎有吾|純粋なトリックが味わえる学園ミステリー【ネタバレなし】部活中の生徒もたくさんいたのに、密室。体育館という、学校内で起こった殺人事件に立ち向かう、風変わりな高校生探偵のお話をご紹介します。ライトノベル調なのに、トリックは古典的。高校という現実的な舞台なのに、登場人物はぶっ飛んでいる。そんなギャップが味わえる、本格的な学園ミステリーです。...

「体育館の殺人」はKindle Unlimitedの読み放題対象です!(2020年5月現在)
>>30日間無料お試しはこちら

ライト
ライト
平成生まれで鮎川哲也賞を受賞したのは初だったんだって!

本格ミステリーから、ちょっとした日常の謎まで、幅広く手がけられています。

これから、きっとさらに注目を集めるはず。

シーア
シーア
私はひそかに目をつけています!

「早朝始発の殺風景」青崎有吾|まとめ

「早朝始発の殺風景」は、日常にひそむ気まずさに着目した、新鮮なミステリー。

シーア

こんなシチュエーション、あるある!

もしかしたら、私たちの何気ない日々にも、ちょっとした謎が隠されているのかもしれません。

自分の周りの人たちの頭の中をイメージして、想像をふくらませるのも面白いものですよ。

ライト

通学電車の中で読むのがピッタリだよ!

「早朝始発の殺風景」作者の青崎有吾さんからコメント

Twitterで著者ご本人にこの記事をご覧いただきました!

読書ブログをやっていて、いちばんうれしい瞬間は、著者の方に、直接自分の感想を読んでいただけること。

ファンレターにお返事をいただけたような気持ちになります!

これまでに作者の方々から頂いた反応は、この記事にまとめています。
reason-why-love-books
私が本が好きな10の理由。いつでもどこでも、本の世界に没頭できる魔法の扉本が好きな理由を改めて考えてみたら、10個浮かび上がってきました。いつでもどこでも楽しめる、マイペースで読み進められる、本の世界に没頭できる、想像力を養える、新しい視点が身につく、疑似体験ができる、知識が得られる、低コストで学べる、活字欲が満たされる、とにかく楽しい。私が面白いと思う本を、多くの人に知ってもらいたいな。...

関連記事

「日常の謎」を扱った学園ミステリーでは、「マツリカ・マトリョシカ」もおすすめ。

二重の謎、密室をテーマにしていて、トリックを明かしていく様子が爽快ですよ。

matsulica-series
「マツリカ・マトリョシカ」相沢沙呼|美女とヘタレ男子の学園ミステリー【マツリカシリーズ】学校にある「開かずの扉」で事件が起こり、自分が犯人ではないかと疑われてしまう。柴山祐希は、自分の、そして友達の疑いを晴らすため、これまでに得た推理能力を集結させて、謎に挑みます。マツリカ・マジョルカ、マツリカ・マハリタ、マツリカ・マトリョシカの3作品からなるマツリカシリーズを解説します。【ネタバレなし】...
青崎有吾作品のレビュー記事はこちら
ABOUT ME
シーア
年間120冊の本を読んできた経験から、おすすめの本をご紹介します。 「絵本講師」の資格を持っています。大人にも子どもにも絵本の魅力をお伝えしたい! 夫・男子ふたり・犬と暮らすワーキングマザー。 仕事も読書も育児も、自分のやりたいことを全部諦めない、欲張りさんです。好奇心旺盛で、いろんなことに興味があります。
【Kindle】スマホで読書をはじめよう
シーア
シーア
小説もビジネス書も、全部自分のスマホ1台で読めるよ!

本を読みたいけれど、かさばるから持ち運びにくい、置く場所がない…とお悩みの方には「Kindle」がおすすめ。

いつでもどこでも、片手で読めるから便利。

私は、防水のiPhoneをお風呂に持ち込んで、Kindleで読書しています。

日替わり・週替わり・月替わりでセールがあるほか、Kindle Unlimitedでは、月額980円(30日間無料)で読み放題のタイトルもあるので、チェックしてみて下さいね。

ライト
ライト
紙の本よりもちょっと安いのもいいところ!
RELATED POST