失恋、それも結婚が目前に迫った時期の婚約破棄となれば、目の前が真っ暗になるほどの絶望を感じるでしょう。
そんなとき、すべてを終わりにしてしまえれば楽だけど、それでも続いていくのが人生というもの。
どん底から立ち直りたいけれど、どうしたらいいか分からない…そんな方におすすめの作品をご紹介します。
婚約破棄された主人公のあすわを救ったのは、ドリフターズ・リスト(漂流者のリスト)。
溺れる者がワラをつかむように、このリストを手にして、あすわは少しずつ自分を見つけていくのです。
「太陽のパスタ、豆のスープ」宮下奈都|登場人物
「太陽のパスタ、豆のスープ」は、主人公のあすわを中心とした物語です。
- 明日羽(あすわ)…ベビー服商社の事務。結婚直前に婚約破棄されて、失意のどん底。
- 六花(ロッカ)…あすわの叔母。ひょうひょうとしていてつかみどころのない性格。
- 譲さん…あすわの婚約者だった人。あまり出てこないので気にしなくていいと思う。
- 京…あすわの幼馴染。美容師。男だったときの名前は捨てた人。
- 郁ちゃん…あすわの同僚で友達。あすわに変わるきっかけをくれる。
他にも、あすわの実家の家族など、彼女の周囲の人たちが登場します。
あすわは、実際のところ、譲さん本人のことを本当には好きじゃなかったんじゃないかな…?と私は思うのです。
「太陽のパスタ、豆のスープ」宮下奈都|あらすじ
ストーリーは、あすわが、譲さんに婚約破棄を言い渡されるシーンから始まります。
2年間付き合って、2ヶ月後には結婚式というときに。
そんなふうに思っても、あとの祭り。あすわは落ち込み、泣いて過ごします。
叔母のロッカさんは、そんなあすわに「やりたいことや、楽しそうなこと、ほしいもの、全部リストに書き出してごらん」と言います。
あすわは、半信半疑でドリフターズ・リストを書き始めます。
リストに従って、やりたいことを実行していくうちに、少しずつ本来の自分の姿を取り戻していくのです。
京に付き合ってもらって、鍋を買いに行ったり、髪を切ってもらったり、エステに行ってみたり…。
やりたいことを書いたドリフターズ・リストは人生の道標
ロッカさんがあすわに勧めた、ドリフターズ・リスト(漂流者のリスト)は、溺れた人がすがりつくように岸辺にたどり着くための指針。
自分のやりたいことをリストアップして、ひとつひとつ自分で叶えていくことで、心も体も立ち直っていくのです。
少し違うけれど、私は、人生でやりたいことを100個掲げたリストを作って、ときどき見返しています。
ロッカさんの言うリストは、そんな大きな夢じゃなくて、もっとシンプルでいいんです。
例えば、あすわのリストはこんな感じ。
- 髪を切る
- きれいになる
- 引っ越す
- 毎日鍋を使う
- 新しいことをやる
- 豆
リストに書いて、達成できたら線を引いて消す…そんなちょっとしたことが、達成感につながるのです。
自分だけの「豆」を見つける、人生の旅
物語の中で、「豆」が重要なモチーフになっています。
同僚の郁ちゃんは、豆料理クラブに入っていて、フリーマーケットで豆の販売スタッフをしています。
あすわと郁ちゃんは、会社ではよくランチをしたりおしゃべりする仲だけど、プライベートはあまり知らなかったことに気づきます。
自分が知っていると思っていた郁ちゃんは、ほんの一部でしかなかった…私には、郁ちゃんみたいに語れるものはひとつもない。
あすわは、これまで自分がいかに空っぽだったか、思い知るのです。
同じ豆を見ても、あすわは何とも思わなかったのに、郁ちゃんは立ち止まって、一歩踏み出したのです。
書いては消しながら、満たされないままの自分でもいいじゃない、と受け入れていきます。
あすわは、時間をかけて、自分にとっての大切なものを見つけていけばいい。
私が選ぶもので私はつくられる。(中略)こうありたいと願うことこそが私をつくっていく。
あすわのまっさらな心には、これからなんでも詰め込めるし、いくらでも「豆」を見つけられるはず。
焦らなくても、少しずつ目の前のことに取り組めば、いつかあすわだけの「豆」が見つかる…そんな気がするのです。
「太陽のパスタ、豆のスープ」宮下奈都|落ち込んだ人の次の一歩を応援する小説
「太陽のパスタ、豆のスープ」は、失恋した人だけでなく、人生がうまくいかなくて落ち込んでいる人に、ぜひ読んでほしい作品。
いきなり元気になれる、特効薬はないけれど、自分の力で立ち上がって、歩いていける…そんなエネルギーが湧いてきます。
ロッカさんの言動は、現実にいるとちょっとムカつくかもしれないけど(笑)
あのまま譲さんと結婚していたら、あすわのことを、いちばん理解して応援してくれている人がそばにいること、気づかなかったかもしれません。
自分が失ったものだけでなく、持っているもののありがたさを、改めて噛みしめるきっかけになればいいなと思います。
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